映画『人間失格-太宰治と3人の女たち-』は実話を元にしたフィクションです。
ではどこが実話なのでしょうか?
映画の中で描かれている役柄と一緒に考察していきます。
もくじ
映画 『人間失格-太宰治と3人の女たち』はどこまで実話かを考察
太宰治の生涯
太宰治は、1909年、青森県の資産家の家に生まれました。
小説が好きで、16歳で最初の創作「最後の太閤」を発表しています。
最初の自殺未遂は20歳の時。
その後、東京帝国大学の仏文科に入学するが、今度はシメ子と心中し、太宰は生き残り未遂となる。
初代と祝言をあげて同棲を開始し
26歳で大学を卒業するも就職に失敗して、首つり自殺未遂。
翌年には薬物中毒で入院。
28歳で初代と心中するも未遂となり離婚。
29歳で美知子と結婚し
30歳で「走れメロス」を刊行した。
美知子との間に子供が生まれ、太宰は小説家として注目され始めていきます。
映画『人間失格』で描かれているのは、
太宰が38歳の、1947年2月から、翌年6月に富栄と入水自殺をするまでの1年あまりの出来事です。
津島美知子と3人の子供たち
宮沢りえさんが演じた太宰の妻、美知子は、太宰の才能を信じながらも、それを口に出さない女性でした。
つつましい生活の中で、3人の子供を育てながら、夜遅く帰宅する太宰の世話もする。
太宰のすることに口出しせず、女性の存在にも目をつむる。
子育てをしながら、太宰の本に印を押す作業もこなしています。
ずっと昔の昭和のしっかり者の妻はこうだった?
太宰の書いた小説『ヴィヨンの妻』は、妻の美知子を題材にしたものだと言われています。
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実際の美知子は、1912年生まれ。
教師をしたのちに、太宰と結婚しています。
美知子とのあいだには3人の子供が生まれます。
長女の園子、長男の正樹がいて、映画の中で出産したのは、次女の里子でした。
正樹は映画の中でも障害があることが見て取れますが、当時の日本では、障害のある子どもを育てることがいかに大変なことだったでしょう。
映画の中で、税金の通知が来きますが、これも実話で巨額の印税の徴収がきたようです。
今のお金に換算すると1000万円を超える金額が、所得税として請求されました。
映画の中で描かれている太宰と美知子の住む家は、かなり質素な家です。
生活費はどうしているのか?
映画を見ながら不思議に思っていたのですが、実際のところ、太宰の裕福な実家から仕送りがあり、それが美知子の生活費となっていたようです。
映画の中で、太宰は毎夜、飲みに出かけていて、そこで散財していたのか。
原稿収入は太宰が使っていたので、巨額の印税の徴収が突然来たときには、妻の美知子はさぞ驚いたことでしょう。
太宰が愛人と自殺したあとのことは映画には出てきませんが、美知子は、太宰の作品の編集、校訂、解題などを行っていたそうです。
のちに、1997年に85歳で死去しました。
太宰治が通った銀座ルパン
映画で描かれているように、実際に太宰は、銀座のバー『ルパン』に通っていました。
ルパンは、今も実在し、映画『人間失格』でも撮影に使われました。
#太宰治 のポーズを再現した#小栗旬=太宰の写真が解禁❗️
⠀⠀
現在も経営している「銀座・ルパン」で撮影された太宰本人の写真とまさに同じ場所&ポーズで #蜷川実花 監督が撮りおろし📸
指先から爪先まで完璧に再現している小栗さん、さすがです…✨
⠀⠀#映画人間失格 pic.twitter.com/QJS6YWkBLZ— 映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』 (@NSmovie2019) July 1, 2019
太宰の写真として有名なこの写真は、銀座のバー・ルパンにて、写真家の林忠彦さんが撮影したものです。
20年ほど前に銀座に行った時に、ルパンを訪れたことがあるのですが。
当時から、太宰治の通ったバーとして、知る人ぞ知る路地裏のバーでした。
気軽に行けるなら行ってみようかな・・・!
【銀座の老舗バー】実は気軽に通える!?一度は行ってみたい銀座の有名オーセンティックバー4選https://t.co/pHOspeUubx
銀座・ルパン
住所:東京都中央区銀座5-5-11塚本不動産ビル地下#ルパン pic.twitter.com/lOpMPVnHcA— レッツエンジョイ東京 (@enjoy_tokyo) April 18, 2017
怪盗ルパンを模したこの看板と小さなドア。
階段を降りると、アンティークなカウンターがあります。
映画の中で見るのは、坂口安吾と頻繁にルパンで飲む太宰。
それが、実際の場所で撮影されているのですから
ここに本当にいたんだ。
と、改めて感じるシーンです。
太田静子は「斜陽」のモデル
映画の中で、「30歳にもなって、静子はかわいい」
と太宰が言う静子は、自分の思い描いたことを実現する一途でかわいい女性です。
実際の静子は、1913年生まれで、実家は九州の大名の御典医の家系で、学生時代から歌集を出版しています。
太宰と手紙のやり取りから、愛人となって子供を授かるところまでになるのですから、静子の手紙の文面にも魅力があったのでしょうね。
実際に、新しい小説のためにと太宰が静子の日記を見せてもらって、誕生したのが「斜陽」でした。
「人間は恋と革命のために生まれてきたのだ」
という斜陽のなかの一文は、静子の日記から使われたとして、太宰が亡くなったあと、「斜陽日記」として出版しました。
太宰との間に生まれた子供は、大田治子としてのちに小説家となっています。
太宰から「認知証」をしたためてもらい、太宰治の名前から「治」の字をもらって治子と名付けられました。
山崎富栄と心中
戦争に行った夫が行方不明となっている美容師・富栄を演じるのは二階堂ふみさん。
富栄は、戦争に出征した夫が行方不明で夫の帰還を待つ妻の身でした。
映画の中で、太宰の手が触れただけで固まってしまうような硬い表情の美容師として登場します。
美知子や静子とは違い、富栄が情熱的な女性に変貌して、すべてをかけて太宰を引き留めようとします。
富栄も、どうやって暮らしているのか?
不思議な存在でしたが
実際の富栄は、父親がお社の水美容学校の創立者で、その後継者になるために学び、YMCAで演技や英語も学んだあとは、父の美容学校で講師も務める、今のキャリアウーマンのような女性でした。
結婚した商社マンの夫は、戦争で行方不明となり、美容学校が空襲でなくなり、そのあとは美容師として仕事をしていました。
太宰と知り合った頃からは、貯金を使い果たし、太宰の最後の執筆作品『人間失格』を制作する助けをしていたと言われています。
映画 『人間失格-太宰治と3人の女たち』を見た感想
恥の多い生涯を送って来ました。
自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。人間失格 太宰治
小説『人間失格』を読んだのは、中学生の頃の夏休みの課題図書だったと思います。
時代背景も違うし、文体が読みづらい小説だったのに、
「恥の多い生涯を送って来ました。」
という一文からの書き出しが印象に残ったものでした。
映画は、太宰治の半生を描いたものです。
公開前から話題となっていたのは、宮沢りえさん、沢尻エリカさん、二階堂ふみさんといった3人の女優さんと、小栗旬さんの濃厚なラブシーン!
たしかにR15指定かと思うところもありますが、色彩が美しいので、女性もうっとりするラブシーンが描かれています。
女優さんのヌードもありますが、小栗旬さんの色気がすごかった・・。
今まで思っていた太宰のイメージとは違う、明るい太宰。
愛人に求められるままに、断れない優柔不断さ。
映画を見ると、実話はどこまでなのか?
実際の太宰は?
映画の中に、太宰が美知子に宛てた遺書が出てきますが、太宰治が25才から32才までの8年間に書いた100通の手紙まとめた本があります。
この本を読めば謎と解けるのかも知れませんね。